athome-developer’s blog

不動産情報サービスのアットホームの開発者が発信するブログ

アットホームオンラインシステム その2

情報システム部の豊田です。

前回、私が投稿させていただいた「アットホームオンラインシステム」の続きです。

  • 「アットホームオンラインシステム」とは、アットホームが加盟する不動産店に対して過去に提供していた、物件情報を業者間に公開するためのシステムです。

 「Windows95」は、パーソナルコンピューター業界にとても大きなインパクトを与えましたが、パソコンに興味のない、いわゆる「普通の人」にも大きな変化を起こしました。なにしろ発売日は解禁と同時に販売する為に深夜に店をオープンし、街はWindows95をいち早く手に入れたい人でごった返し、報道陣まで集まりニュースになりました。あまりの過熱ぶりに「Windows95」が何なのかをわからずにとりあえず買う人まで現れる始末。 これの影響により日本では一社独占といっても過言ではないパソコンの機種も、IBM PC/AT互換機に取って代わられて次の時代へ進みました。

 世間がこのような空気なので、当社でもWindows版のオンラインシステムの開発が急がれました。とりあえず、プロトタイプっぽいものを作ることになりましたが、当時は何の言語で作ればいいのかよくわからず、開発言語界隈も「オブジェクト指向」が注目を浴びていた頃で、「WindowsのアプリケーションはC++作る」「オブジェクト指向でないとWindowsのプログラムは作れない」といった事を聞きかじったので、C言語を多少つかえた私はそのまま軽い気持ちで会社に「Borland C++ and Application Framework 3.0」を買ってもらいました。自主的に家のパソコンにも同じコンパイラをインストール(当時98000円!!)して、書籍を買い込んでなんとかモノにしようとしたのですが、このハードルは乗り越えられませんでした。あの時は会社にも家族にも「ごめんなさい」でした・・・。

 そんな時、開発協力ベンダーさんから「Visual Basic 5.0」で作ることを提案されて話は一気に進みました。まだ「Windowsらしい、Windowsならでは」という理解があまり進んでなく、とりあえずWindowsで動作し、マウスで操作できるというシロモノでしたが、時代の流れに振り落されることなくオンラインシステムは生まれ変わりました。アットホームオンラインシステムとしては、これがバージョン5に当たります。ちなみに画面のプロトタイプは私が作りました。私たちもお客様もWindowsには比較的早く馴染んだこともあり、すぐにバージョン6にアップデートされ、Windowsらしいアプリケーションとなりました。

 このWindows版オンラインシステムはバージョン7まで行きましたが、マウスによる操作でキーボードから離れられたことと、ユーザインターフェースはお客様の声を積極的に取り込んでかなり作り込んだ為に、おそらくそれまでで一番使い勝手のよかった印象です。クライアントサイドはWindows版となりましたが、ホスト側は従来のシステムにもう一つレイヤーを被せて漢字コード変換などを行って、上り電文、下り電文なんて言葉が普通に飛び交ってました。この時にとても印象的だったのが、キーボードを使わずにマウスだけでほとんどの操作が可能だったのですが、従来の利用者からは「前のように番号で操作できるようにして欲しい」という「テンキーを使ったショートカット」の要望がとても多くあったことを思い出します。プロフェッショナルな方々が使うシステムなので、慣れてくると少しでも早い操作を望まれるということを知った時でもありました。

 合わせてWindows版オンラインシステムから派生した「アットホームNAVI」というタッチパネルで操作するキオスク端末も生まれました。従来のオンラインシステムは不動産業の方々にご利用いただく為のシステムでしたが、このアットホームNAVIは不動産屋さんの店頭に来たエンドユーザが不動産情報を検索し、気になる情報があれば接客カウンターにて相談するという流れを想定して作られたものでした。エンドユーザからすると、自分の希望条件がまだ曖昧な状態でも、このシステムを通して相場感や設備の違いを確認したり、住みたいエリアを見つける手助けとなり、不動産屋さんからすると、お客様に落ち着いてゆっくり探してもらえるということで、なかなか評判の良いシステムでした。

 このアットホームNAVIは、タッチパネルにタッチすると音がする愉快な仕様でしたが、社内での開発にてテストで触りまくっていたらフロア中のスタッフから「うるさい!」と言われたのはほのぼの(?)エピソードの一つです。この開発には深くは関わらなかったのですが、アットホームNAVIはWindowsで動作しており、不動産屋さんがお店を閉める時には、アプリケーションを終了してOSをシャットダウンしていただくというちょっと煩わしい作業が必要でした。これを一発でシャットダウンまで導く小さなプログラムを作成しました。プログラムそのものは小さなものでしたが、WindowsAPIのリファレンスマニュアルとにらめっこして作った最初のプログラムでもあったので、個人的に印象に残っているプログラムでした。そしてごくたまにシャットダウンしないことがあり、その課題も完璧にはクリアできなかったのも印象に残ってる理由かもしれません・・・。(その節は申し訳ありませんでした。)

 ここまでが各パーソナルコンピューターで動作するネイティブアプリケーションでサービスを提供していた時代です。

 私はバージョン6の開発が始まったくらいから、別の潮流に飲み込まれていました。そう、インターネットです。ウェブブラウザーです。ホームページです。当社でもコンシューマー向けのウェブサイトを立ち上げました。合わせて世の中のシステム開発領域ではダウンサイジングなんて言葉の波が押し寄せていましたね。そういったわけでしばらくはオンラインシステムから離れていて、コンシューマー向けサイトへ物件情報を掲載する為のスタティックページを生成するプログラムをVisulaBasicで書いていました。

 当社は不動産業を営む方々同士の不動産会社間情報流通がメインだったこともあり、当時は直接エンドユーザに不動産情報を届ける、消費者向け情報流通についてはまだ手探りの状態でした。一般的にも情報誌が主体で物件検索サイト自体が珍しかった頃です。こういった背景から「検索する」というほど物件数もありませんでしたので、ディレクトリツリー型のスタティックページで物件情報を公開していました。ちなみに私の作ったこのスタティックページ生成のプログラムが出来るまでは、担当部署の方はHTMLタグをテキストエディタで入力してページを作っていたという、今となっては驚きの業務でした。サービス提供したいという気持ちが先行して、環境や道具が整ってなくても力技で進んでいくスタイルは当社の社風なのかもしれません。

 そのプログラム自体はホントに簡単なプログラムだったのですが、ある程度自動化できたことによりかなり喜ばれました。それからずいぶんと月日が経ち、そのプログラムも使われなくなったはずなのに「あの時のあのプログラムは本当に助かりました」と事ある毎に言われて、「よっぽどHTMLのタグ打ちはツラかったんだな・・・」と思うと同時に「プログラムの中身が簡単であるとか難しいであるとかは関係ないよな」ということを知った時でもありました。

 最初にこの仕事を頼まれた時には「HTML」の意味は解らないし、「ネットスケープナビゲーター」が何を指しているのかもわかっていませんでしたが、この仕事によってHTMLへの理解が進み、ダイナミックにページ内容を書き換えるためにはどうしたらいいのかというのを試行錯誤していたことを思い出します。最初はWindows95に付属していた「Personal Web Server」と「Perl」を使って理解を深めていました。何にもわからない状態からだったので、概念そのものが腹落ちするまでとても苦労したことを思い出します。サンプルで引っ張ってきたperlスクリプトが動くまでに何度 "Internal Server Error"というメッセージを見たことか。今でも"cgi-bin"という文字列を見ると当時の多少ネガティブ寄りな気持ちを思い出します。幸いなことに所属部署内でも特殊な立ち位置だったので、この辺りの調査・研究・学習の時間はかなりあったのと、インターネットにはすでにこの手の話はたくさん公開されていたのに助けられました。こういった情報をシェアしていただいた先人の方々には感謝しかありません。

こうして、オンラインシステム畑から少し離れたところに置かれて、インターネットをほんの少しカジったところでポンと肩を叩かれるわけです。

「Web版のオンラインシステムって作れるか?」と。

Windows版オンラインをC++で作ろうとして挫折した苦い思い出がよみがえります。

しかし、その不安を超えるほどに私は当社のオンラインシステムが好きだったようです。

またしてもずいぶんと長くなりました。 ここから先のお話は、また次の機会に。